2020/4/10(金)、COVID-19で集中治療室重症例における血栓性合併症の発生について調べた研究「Incidence of thrombotic complications in critically ill ICU patients with COVID-19」の結果をまとめました。

2020/4/10(金)、COVID-19で集中治療室重症例における血栓性合併症の発生について調べた研究「Incidence of thrombotic complications in critically ill ICU patients with COVID-19」の結果をまとめました。COVID-19は、炎症亢進、低酸素血症、ベット上固定(immobilisation)、播種性血管内凝固(diffuse intravascular coagulation: DIC)等によって、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症、いずれの素因となる可能性があります。しかしながら、血栓性合併症の発生率についての報告はありませんでした。オランダにて、2つの大学病院、1つの教育病院にて、COVID-19で集中治療室に入院、症候性急性肺塞栓症(pulmonary embolism: PE)、深部静脈血栓症、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全身性動脈塞栓症の複合転帰の発生率を評価しました。結果、COVID-19肺炎の確定例で集中治療室入院184例、死亡23例(13%)、生存退院22例(12%)、2020/4/5現在、139例(76%)は集中治療室で治療中です。全例、標準的な血栓予防策を受けていました。複合転帰の発生率は31%(95%CI 20-41)で、胸部CT肺血管造影またはエコー検査によって確定した静脈血栓塞栓症27%(95%CI 17-37)、動脈血栓性事象3.7%(95%CI 0-8.2)でした。肺塞栓症25例(81%)は最も頻度の高い血栓性合併症でした。年齢(調整後HR 1歳あたり1.05 95%CI 1.004-1.01)、プロトロンビン時間3秒以上、活性化部分トロンボプラスチン時間5秒以上で定義される凝固異常(調整後HR 4.1 95%CI 1.9- 9.1)は、血栓性合併症の独立した予測因子でした。COVID-19感染症で集中治療室入院の31%に血栓性合併症の発生を認めました。無作為化のエビデンスはありませんが、COVID-19で集中治療室治療が必要な例には、薬物的血栓予防療法の適応の推奨、より高用量の予防的投与量を考慮すべきではないかと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32291094
COVID-19と血栓症の関係です。全ての感染症、全身性の炎症、長期臥床は血栓症を合併することがありますが、31%は確かに予想以上に多い印象です。予防的抗血栓療法は出血性合併症リスクも増加させてしまうので適応に関しては議論の分かれるとことです。詳しくは主治医までご相談ください。


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