2020/3/27(金)、COVID-19の死亡例と心血管合併症について調べた研究「Cardiovascular Implications of Fatal Outcomes of Patients With Coronavirus Disease 2019」の結果をまとめました。

2020/3/27(金)、COVID-19の死亡例と心血管合併症について調べた研究「Cardiovascular Implications of Fatal Outcomes of Patients With Coronavirus Disease 2019」の結果をまとめました。COVID-19の拡大、死亡は世界各国、地域で起きています。予後不良、心血管合併症への影響は十分にわかっていません。COVID-19の致死的転帰と心血管疾患、心筋障害の関係を調べるために、2020/1/23から/2/23まで、中国、武漢市第7病院(Seventh Hospital of Wuhan City)、COVID-19の単施設後ろ向き連続症例解析を実施しました。人口統計学的データ、検査所見、基礎疾患、治療、トロポニンT(TnT)値の上昇の有無について収集しました。結果、COVID-19確定例187例、144例(77%)は退院、43例(23%)は死亡しました。平均年齢58.5歳、全体のうち66例(35.3%)は高血圧、冠動脈疾患、心筋症を含む心血管疾患を持っており、52例(27.8%)はトロポニンT値の上昇を認め、心筋障害を来していました。入院中の死亡は、心血管疾患の既往なし、トロポニンT値上昇なし105例中8例で、死亡率7.62%でした。心血管疾患の既往あり、トロポニンT値の上昇なし30例中4例で、死亡率13.33%、心血管疾患の既往なし、トロポニンT値の上昇あり16例中6例で、死亡率37.50%、心血管疾患の既往あり、トロポニンT値の上昇あり36例中25例で、死亡率69.44%でした。心血管疾患の既往がある場合、心血管疾患の既往がない場合と比べて、トロポニンT値上昇の高い頻度(54.5% vs 13.2%)でした。血清トロポニンT値は、血清高感度CRP値(β = 0.530, P < .001)、 NT-proBNP値(β = 0.613, P < .001)とと有意な線形関係を認めました。トロポニンT値とBN-proBNPの平均値と四分位範囲は、入院期間中(0.307 [0.094-0.600]; 1902.00 [728.35-8100.00])で、死が差し迫った時(0.141 [0.058-0.860]; 5375 [1179.50-25695.25)、入院時(0.0355 [0.015-0.102]; 796.90 [401.93-1742.25)と、死亡例においては有意に上昇(P = .001; P < .001)を認めました。一方で、生存例においてはトロポニンT値は(0.010 [0.007-0.019]; 0.013 [0.007-0.022]; 0.011 [0.007-0.016])、NT-proBNP値は(352.20 [174.70-636.70]; 433.80 [155.80-1272.60]; 145.40 [63.4-526.50])と有意な変化(P = .96; P = .16)を認めませんでした。入院中、トロポニンT値の上昇を認めた例は、トロポニンT値の上昇を認めなかった例と比べて。悪性の不整脈、グルココルチコイド治療(71.2% vs 51.1%)、機械的換気(59.6% vs 10.4%)を必要とする頻度を多く認めました。アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬を使用例19例、非使用168例のそれぞれの死亡率は、36.8%(7例)、25.6%(43例)でした。COVID-19において心筋障害は致死的転帰と有意に関連を認めました。一方で、心血管疾患の既往はあっても心筋障害がないことは比較的予後良好の予測因子でした。心筋障害は心機能障害、不整脈と関連していました。炎症が心筋障害のメカニズムとして可能性があります。心筋障害のハイリスク例においては積極的治療(Aggressive treatment)を考慮しても良いでしょうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2763845
COVID-19と心血管疾患、心筋障害との関係についての報告です。心血管疾患の既往あり、心筋障害ありの場合の死亡率は69.44%にも達するという解析結果です。心血管疾患の既往はない場合のほうが、心血管疾患の既往がある場合と比べて、心筋障害ありの場合69.44%→37.50%、心筋障害なしの場合13.33%→7.62%と、いずれの場合も死亡率は低下します。COVID-19感染後のことを考えた場合にも、やはり心血管疾患を予防することが重要と言えるのではないでしょうか。


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