2020/6/9、前兆を伴う片頭痛と心血管疾患の関係を調べた研究「Association of Migraine With Aura and Other Risk Factors With Incident Cardiovascular Disease in Women」の結果をまとめました。

2020/6/9、前兆を伴う片頭痛と心血管疾患の関係を調べた研究「Association of Migraine With Aura and Other Risk Factors With Incident Cardiovascular Disease in Women」の結果をまとめました。前兆を伴う片頭痛(Migraine with aura)は、心血管疾患(cardiovascular disease: CVD)リスクを上昇させることが知られています。既存の心血管疾患リスク因子との関係とは独立して、前兆を伴う片頭痛が心血管疾患の発症とどの程度絶対寄与があるかは十分にわかっていませんでした。前兆を伴う片頭痛を持つ女性は、他の血管リスク因子を持つ女性と比較して心血管疾患の発症率を評価するために、アメリカにて、女性の医療従事者のコホート研究「the Women’s Health Study cohort」にて、1992年から1995年まで、開始時の心血管疾患の既往なし、脂質測定を実施、2018年まで追跡しました。開始時、自己報告で前兆を伴う片頭痛がある群と、前兆を伴わない片頭痛(migraine without aura)、片頭痛のない群で比較しました。一次転帰は主要心血管疾患(心筋梗塞の初発、脳卒中、心血管疾患死)としました。多変量調整、主要心血管疾患発生率、リスク因子状況をコホートに含みました。結果、女性27858例、開始時の平均年齢54.7歳、前兆を伴う片頭痛1435例(5.2%)、前兆を伴わない片頭痛2177例(7.8%)、片頭痛なし24246例(87.0%)でした。平均22.6年間の追跡、主要心血管疾患事象1666例発生しました。調整後、1000人年あたりの主要心血管疾患発生率は、前兆を伴う片頭痛群で3.36%(95% CI, 2.72-3.99)、前兆を伴なわない片頭痛、片頭痛なし群で2.21%(95% CI, 1.98-2.24)で、有意差(P<0.001)を認めました。前兆を伴う片頭痛群で、肥満(2.29 [95% CI, 2.02-2.56])、中性脂肪高値(2.67 [95% CI, 2.38-2.95])、HDLコレステロール低値(2.63 [95% CI, 2.33-2.94])と比較して有意に高率でした。収縮期血圧上昇(3.78 [95% CI, 2.76-4.81])、総コレステロール高値(2.85 [95% CI, 2.38-3.32])、心筋梗塞の家族歴(2.71 [95% CI, 2.38-3.05])と比べて有意ではありませんでした。糖尿病(5.76 [95% CI, 4.68-6.84])、現在の喫煙(4.29 [95% CI, 3.79-4.79])は、前兆を伴う片頭痛と比べて有意に高率でした。前兆を伴う片頭痛は、肥満を加えた場合に、1000人年あたり1.01例増加、糖尿病を加えた場合に2.57例増加させました。45歳以上の女性医療従事者研究において、前兆を伴う片頭痛を持つ女性はそうではない場合と比べて、調整後心血管疾患の発生率が高値でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32515815
前兆を伴う片頭痛は心血管疾患のリスク因子であることは以前から指摘されていましたが、その程度は1.52倍(3.36 vs 2.21)程度であることがわかりました。ただ、この論文では、前兆を伴う片頭痛によるリスク増加の程度よりも、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞の家族歴、糖尿病、喫煙のほうがハイリスク因子であることを強調しています。


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