2020/6/26、急性消化管出血において高用量トラネキサム酸の投与と死亡、血栓塞栓症事象への影響を調べた研究「Effects of a high-dose 24-h infusion of tranexamic acid on death and thromboembolic events in patients with acute gastrointestinal bleeding (HALT-IT): an international randomised, double-blind, placebo-controlled trial」の結果をまとめました。

2020/6/26、急性消化管出血において高用量トラネキサム酸の投与と死亡、血栓塞栓症事象への影響を調べた研究「Effects of a high-dose 24-h infusion of tranexamic acid on death and thromboembolic events in patients with acute gastrointestinal bleeding (HALT-IT): an international randomised, double-blind, placebo-controlled trial」の結果をまとめました。トラネキサム酸は外傷時において外科的出血、出血による死亡を減少させます。小規模研究のメタ解析では、トラネキサム酸は消化管出血による死亡を減少させる可能性が示唆されています。消化管出血に対するトラネキサム酸の効果を評価するために、15カ国、164施設にて国際多施設無作為化プラセボ対照試験を実施しました。成人で、上部または下部消化管出血で、出血による死亡リスクがあるような有意な出血と主治医が判断した場合に組み込みました。無作為に治療パックを割り振らました。治療パックには、トラネキサム酸1gの負荷投与、0.9%の食塩水100mlを10分間掛けて血管内に緩徐に投与、その後、維持量としてトラネキサム酸3g、等張液1000mlを混和、24時間掛けて125mg/hの速度で投与するか、プラセボとして0.9%の食塩水を投与しました。二重盲検化しました。一次転帰は5日間の無作為化の期間内の出血による死亡としました。データが手に入らなかった例は除外しました。2013年から2019年まで、12009例を対象に、トラネキサム酸群5994例(49.9%)、プラセボ群6015例(50.1%)、5日以内の出血による死亡は、トラネキサム酸群222例(4%)、プラセボ群226例(4%)発生(risk ratio [RR] 0·99, 95% CI 0·82-1·18)しました。動脈性血栓塞栓症事象(心筋梗塞、脳卒中)は、トラネキサム酸群とプラセボ群で同等程度(42 [0·7%] of 5952 vs 46 [0·8%] of 5977; 0·92; 0·60 to 1·39)でした。静脈性血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)は、トラネキサム酸群はプラセボ群と比べて有意に高率(48 [0·8%] of 5952 vs 26 [0·4%] of 5977; RR 1·85; 95% CI 1·15 to 2·98)でした。トラネキサム酸は消化管出血による死亡を減少させませんでした。この結果からは、無作為化試験の結果外で、トラネキサム酸は消化管出血の治療として使用しないべきでしょうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32563378
トラネキサム酸と出血、血栓症についての研究です。外傷による出血に対してトラネキサム酸はしばしば使われますが、消化管出血に対してトラネキサム酸は死亡率を減らさず、静脈血栓塞栓症を増加させることがわかりました。


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