2020/7/7、心房細動においてアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンによる治療とワルファリンで骨粗鬆症性骨折へのリスクについて調べた研究「Association Between Treatment With Apixaban, Dabigatran, Rivaroxaban, or Warfarin and Risk for Osteoporotic Fractures Among Patients With Atrial Fibrillation A Population-Based Cohort Study」の結果をまとめました。

2020/7/7、心房細動においてアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンによる治療とワルファリンで骨粗鬆症性骨折へのリスクについて調べた研究「Association Between Treatment With Apixaban, Dabigatran, Rivaroxaban, or Warfarin and Risk for Osteoporotic Fractures Among Patients With Atrial Fibrillation A Population-Based Cohort Study」の結果をまとめました。心房細動の抗凝固薬において、どの抗凝固薬が骨粗鬆症性骨折リスクと関連しているか、抗凝固薬ごとの骨粗鬆症性骨折のリスクを比較するために、集団ベースコホート研究を実施しました。香港大学管理部の広域電子カルテ記録データベースにて、2010年から2017年、心房細動と新規に診断、新規にワルファリンまたは直接経口抗凝固薬、アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンが処方開始となった例を対象、2018年まで追跡しました。抗凝固薬内服中の骨粗鬆症性の大腿骨骨折、椎骨骨折に関して、累計疾病発生率で重み付け後の傾向スコアを用いて比較しました。結果、23515例、アピキサバン3241例、ダビガトラン6867例、リバーロキサバン3866例、ワルファリン9541例、全体の平均年齢75.4歳、ワルファリン73.1歳、アピキサバン77.9歳でした。平均423日間の追跡期間、骨折401例発生、粗事象発生数、100人年あたりの重み付け発生率はそれぞれ、アピキサバン53、0.82、ダビガトラン95、0.76、リバーロキサバン57、0.67、ワルファリン196、1.11でした。24ヶ月の追跡では、直接経口抗凝固薬の使用者はワルファリン使用者とくらべて、骨折リスク低値(apixaban CID, −0.88% [95% CI, −1.66% to −0.21%]; dabigatran CID, −0.81% [CI, −1.34% to −0.23%]; and rivaroxaban CID, −1.13% [CI, −1.67% to −0.53%])を認めました。24ヶ月の間に、各直接経口抗凝固薬間の直接比較(apixaban vs. dabigatran CID, −0.06% [CI, −0.69% to 0.49%]; rivaroxaban vs. dabigatran CID, −0.32% [CI, −0.84% to 0.18%]; and rivaroxaban vs. apixaban CID, −0.25% [CI, −0.86% to 0.40%])では、差を認めませんでした。限界として、潜在的な交絡因子の可能性はあります。心房細動で直接経口抗凝固薬を使用することはワルファリンの使用と比べて骨粗鬆症性骨折のリスクを軽減する可能性があります。直接経口抗凝固薬の選択においては骨折リスクの差は認めませんでした。この所見は抗凝固薬の選択の際、リスクベネフィットを考えるための情報として有用ではないかと論文ではまとめています。
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M19-3671
抗凝固薬において、直接経口抗凝固薬とワルファリン、直接経口抗凝固薬のほうが骨折リスクが低いという報告です。以前、ヨーロッパからも同様の論文が出ています。
「2020/2/1(土)、ワルファリンと非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬 の骨折リスクについて調べた研究「Fracture risks among patients with atrial fibrillation receiving different oral anticoagulants: a real-world nationwide cohort study」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/14644
ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子(II、VII、IX、X)の活性化に必要なハイドロキノン型ビタミンKの生成に必要なビタミンKエトポシド還元酵素とビタミンKレノン還元酵素を阻害することで、間接的に抗凝固作用を発揮しますが、同時に他の生体内のビタミンK関連の代謝も阻害してしまいます。正常な骨代謝にもビタミンKが関与しているため、ワルファリンによる骨粗鬆症性骨折への影響は説明可能です。一方で、直接経口抗凝固薬はいずれもビタミンK代謝には影響しないため骨折を増やす心配はありません。骨折リスクの有無だけで抗凝固薬を選ぶことは実臨床としてはほとんどなく、基礎疾患、適応によってはワルファリンでなければならない場合もあります。詳しくは主治医と相談ください。


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