2020/8/11、経皮的冠動脈形成術後のP2Y12阻害薬投与中のアスピリンの中止の安全性と有効性について調べた研究「The Safety and Efficacy of Aspirin Discontinuation on a Background of a P2Y 12 Inhibitor in Patients After Percutaneous Coronary Intervention: A Systematic Review and Meta-Analysis」の要旨をまとめました。

2020/8/11、経皮的冠動脈形成術後のP2Y12阻害薬投与中のアスピリンの中止の安全性と有効性について調べた研究「The Safety and Efficacy of Aspirin Discontinuation on a Background of a P2Y 12 Inhibitor in Patients After Percutaneous Coronary Intervention: A Systematic Review and Meta-Analysis」の要旨をまとめました。経皮的冠動脈形成術後、アスピリンとP2Y12阻害薬による抗血小板薬2剤併用療法は、アスピリン単独と比べて、主要有害心血管事象のリスクを減少させますが、出血リスクを増加させてしまいます。アスピリンを中止し、適したP2Y12阻害薬単剤療法の安全性は十分にわかっていません。2001年から2020年、経皮的冠動脈形成術後、1ヶ月から3ヶ月の間に、アスピリンを中止、P2Y12阻害薬単剤療法と、従来の抗血小板薬2剤併用療法と比較した無作為化試験を対象にメタ解析を実施しました。5つの試験を組み込み、経皮的冠動脈形成術後の追跡間は12ヶ月から15ヶ月でした。各試験で、事前指定評価項目は出血、主要有害心血管事象転帰でした。結果、試験集団32145例、安定冠動脈疾患14095例(43.8%)、急性冠症候群18046例(56.1%)でした。試験対象群では、背景としてP2Y12阻害薬の使用、クロピドグレル2649例(16.5%)、プラスグレルまたはチカグレロル13408例(83.5%)でした。一次出血転帰820例、主要有害心血管事象937例発生しました。経皮的冠動脈形成術後1ヶ月から3ヶ月の間のアスピリンの中止は抗血小板薬2剤併用療法と比べて、大出血リスクを40%有意に低下(1.97% versus 3.13%; hazard ratio [HR], 0.60 [95% CI, 0.45-0.79])を認めましたが、主要有害心血管事象(2.73% versus 3.11%; HR, 0.88 [95% CI, 0.77-1.02])、心筋梗塞(1.08% versus 1.27%; HR, 0.85 [95% CI, 0.69-1.06])、死亡(1.25% versus 1.47%; HR, 0.85 [95% CI, 0.70-1.03])リスク増加を認めませんでした。急性冠症候群に対して経皮的冠動脈形成術を実施した例においても結果は一貫しており、経皮的冠動脈形成術後1ヶ月から3ヶ月の間にアスピリンを中止した場合、出血50%減少(1.78% versus 3.58%; HR, 0.50 [95% CI, 0.41-0.61])、主要有害心血管事象の増加(2.51% versus 2.98%; HR, 0.85 [95% CI, 0.70-1.03])は認めませんでした。アスピリンの中止、P2Y12阻害薬単剤療法は、経皮的冠動脈形成術後1ヶ月から3ヶ月の出血リスクを低下を認めました。急性冠症候群においても、アスピリンの中止は主要有害心血管事象のリスク増加を認めませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32551860
経皮的冠動脈形成術後は通常、抗血小板薬2剤併用療法が実施されますが、1ヶ月後から1ヶ月の間にアスピリンを中止、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルの抗血小板薬単剤療法においても主要有害心血管事象は増加しなかったという報告です。


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