2020/11/13、冠動脈疾患において冠血流予備量比による治療適応の決定と主要有害心事象との関係について調べた研究「Association Between Adherence to Fractional Flow Reserve Treatment Thresholds and Major Adverse Cardiac Events in Patients With Coronary Artery Disease」の要旨をまとめました。

2020/11/13、冠動脈疾患において冠血流予備量比による治療適応の決定と主要有害心事象との関係について調べた研究「Association Between Adherence to Fractional Flow Reserve Treatment Thresholds and Major Adverse Cardiac Events in Patients With Coronary Artery Disease」の要旨をまとめました。冠血流予備量比(Fractional flow reserve: FFR)は心筋虚血を引き起こす潜在的な冠動脈狭窄を評価するための侵襲的な測定で、経皮的冠動脈形成術を実施するかどうかの意思決定のガイドです。経皮的冠動脈形成術の際の冠血流予備量比の閾値は一律の介入手技で実施されているかどうか、閾値のアドヒアランスは臨床転帰の改善と関連しているかどうかは十分にわかっていませんでした。経皮的冠動脈形成術の際のエビデンスに基づいた冠血流予備量比の閾値の遵守と臨床転帰との関係を評価するために、2013年から2018年、カナダ、オンタリオ州、成人の冠動脈疾患、ST上昇型心筋梗塞を除外、1枝病変、冠血流予備量比の評価を実施、2019年まで追跡、後ろ向き多施設集団コホート研究を実施しました。冠血流予備量比の閾値に基づいて、FFR 0.80以下の虚血群、FFR 0.80超の非虚血群、2つの分離コホートを実施しました。治療選択バイアスのために治療重み付けの逆相関の可能性を使用しました。経皮的冠動脈形成術ありか経皮的冠動脈形成術なしか、主要評価項目として、主要有害心事象、死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急冠動脈血行再建と定義しました。結果、9106例、平均年齢65際、女性35.3%、1枝病変の冠血流予備量比を評価しました。冠血流予備量比にて虚血と判定された2693例において、75.3%は経皮的冠動脈形成術を受け、24.7%は薬物療法のみを受けました。冠血流予備量比虚血群のコホートにおいて、経皮的冠動脈形成術を受けた群は経皮的冠動脈形成術を受けなかった群と比べて、5年間の主要有害心事象の有意な低下(31.5% vs 39.1%; hazard ratio, 0.77 [95% CI, 0.63-0.94])を認めました。冠血流予備量比非虚血群6413例において、12.6%は経皮的冠動脈形成術を受け、87.4%は薬物療法のみを受けました。非虚血群のコホートにおいて、経皮的冠動脈形成術を受けた群は経皮的冠動脈形成術を浮かなかった群と比べて、5年間の主要有害心事象のハザード比の有意な増加(33.3% vs 24.4%; HR, 1.37 [95% CI, 1.14-1.65])を認めました。冠動脈疾患、1枝病変の冠動脈予備量比の測定を一律の臨床で実施した場合、経皮的冠動脈形成術を実施した場合、経皮的冠動脈形成術を実施しなかった場合と比べて、虚血病変においては主要有害心事象の有意な低下、非虚血病変においては主要有害心事象の有意な増加と関連を認めました。本所見はエビデンスに基づいた冠血流予備量比の閾値に従った経皮的冠動脈形成術の実施を支持するものです。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2773127
経皮的冠動脈形成術の適応の判断においては冠血流予備量比の評価を行い、虚血であれば経皮的冠動脈形成術を実施したほうが予後が良く、虚血ではなければ薬物療法単独のほうが予後が良かったという報告です。冠血流予備量比の評価は最近はもう日本では一般的です。詳しくは主治医へご相談ください。
ちなみに、私事ですが、年末、念のため程度の気持ちで家族の冠動脈CTを行ったところ有意狭窄病変を認め、年始に心臓血管研究所付属病院にてPCIを行っていただきました。明らかな狭心症症状はなかったとのことで、無症候性冠動脈狭窄症でした。自覚症状の有無は勿論大事ですが、危険因子に応じた冠動脈評価の重要性を改めて再認識しました。

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