2021/3/1、社会的孤立と心疾患、脳卒中リスクとの関係について調べた研究「Social isolation and risk of heart disease and stroke: analysis of two large UK prospective studies」の結果が発表されました。社会的孤立(social isolation)は冠動脈心疾患、脳卒中のリスク上昇と関連があると言われています。しかしながら、致死的、非致死的事象で差があるのか、社会的孤立の種類(一人暮らし、社会的接触が乏しいこと)と関係性は十分にわかっていませんでした。2つのイギリスの大規模前向きコホート研究によって調べました。「Million Women Study」「UK Biobank」の参加者、2010年時点で冠動脈心疾患、脳卒中の既往のない、社会的接触のデータを前向き解析に組み込みました。参加者は2017年まで追跡、全国病院死亡統計のデータと電子的に結合しました。Cox回帰モデルにて冠動脈心疾患、脳卒中の発症(全体、初回発生時の入院、初回入院時の死亡との関連)のリスク比を算出、3段階の社会的孤立(一人暮らし、家族や友人との接触、グループへの参加)、年齢、性別、教育歴、人種、貧困、喫煙、飲酒、体格指数、身体活動、自己評価健康を調整しました。合計938558例解析、平均年齢63歳、「Million Women Study」から481946例、平均年齢68歳、「UK Biobank」から456612例、平均年齢57歳でした。平均追跡期間7年、冠動脈心疾患の初回発生42402例(そのうち致死性1834例)、脳卒中の初回発生19999例(そのうち致死性529例)でした。社会的孤立と冠動脈心疾患、脳卒中の初回発生入院との関係(combined RR for both studies 1·01 [95% CI 0·98–1·04] for coronary heart disease and 1·13 [1·08–1·18] for stroke, when comparing the most isolated group with the least isolated group)はほとんど認められませんでした。しかしながら、入院関連なしの死亡リスクは最も社会的孤立群において冠動脈心疾患(1·86 [1·63–2·12])、脳卒中(1·91 [1·48–2·46])ともに高率でした。.初回事象時の冠動脈心疾患、脳卒中の死亡において、一人暮らしの群(1·60 [1·46–1·75])は一人暮らしではない群と比べて、家族、友人と接触のない群(1·27 [1·16–1·38])はある群と比べて、有意に高リスク比(test for heterogeneity, p=0·002)でした。本所見は教育歴、自己評価健康によって大きさ差はありませんでした。社会的孤立は冠動脈心疾患、脳卒中の発症リスクにおいてはほとんど直接的影響を認めませんでした。対照的に、社会的孤立は事象発生後は、特にひとり暮らしの場合、おそらく急性心臓発作、脳卒中において反応、迅速な支援がないことによって、病院到着前の死亡率のリスク増加と関連をしていました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(20)30291-7/fulltext
社会的孤立は様々な病気、健康の社会的決定因子であることは知られていますが、イギリス、93万8558例、平均7年追跡の前向き研究の結果、孤独は冠動脈心疾患、脳卒中にはほとんど影響がなかったとの報告です。孤独で何でも説明出来るという訳ではないということです。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0309535546/index.html
2021/3/1、社会的孤立と心疾患、脳卒中リスクとの関係について調べた研究「Social isolation and risk of heart disease and stroke: analysis of two large UK prospective studies」の結果が発表されました。