2020/5/27、成人外傷に対するトラネキサム酸投与の合併症発生率と死亡率について調べた研究「Mortality and Complication Rates in Adult Trauma Patients Receiving Tranexamic Acid: A Single‐center Experience in the Post–CRASH‐2 Era」の結果をまとめました。「CRASH-2」試験では、外傷性出血に対してトラネキサム酸(tranexamic acid: TXA)は安全に死亡率を有意に低下させることがわかりました。「CRASH-2」試験ではアメリカは含まれていませんでした。アメリカにて、トラネキサム酸の投与戦略、死亡率、有害事象の発生率を評価するために、一次外傷センターにて、「post-CRASH-2 era」試験を実施しました。2014年から2017年まで、急性外傷後、トラネキサム酸の投与を受けた18歳以上を対象に後ろ向き研究を実施しました。経口トラネキサム酸、非外傷による手術のためのトラネキサム酸、外傷後8時間以上、救急部到着時心停止を除外しました。外傷レジストリ、病院の電子カルテ記録からデータを収集しました。一次転帰は受傷から28日以内の院内死亡、急性血栓塞栓症としました。結果、273例、平均年齢43.8歳、受傷からトラネキサム酸の投与までの平均時間は1.55時間で、229(83.9%)で3時間以内に投与を受けていました。受賞後28日以内の全死亡率は12.8%(95% confidence interval [CI] = 8.9% to 16.7%)で、「CRASH-2」試験(14.5%, 95% CI = 13.9% to 15.2%)と比べて同様でした。急性血栓塞栓症の発生率は6.6%(95% CI = 3.7% to 9.5%)で、「CRASH-2」試験(2.0%, 95% CI = 1.73% to 2.27%)と比べて高率でした。手術(64.8% vs. 47.9%)、輸血(74.0% vs. 50.4%)は「CRASH-2」試験よりも多く認めました。トラネキサム酸の投与を受けた成人は「CRASH-2」試験と比べて死亡率は同等でしたが、血栓塞栓症の発生率は高率でした。特性の違い、外傷の重症度、トラネキサム酸の投与量、手術、輸血の率の違い等が観察された差を説明可能かも知れません。トラネキサム酸の投与と血栓塞栓症イベントのリスク因子、血栓塞栓症の発生率を明らかにするためにさらなる研究が必要であると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32189440
今回は外傷に限っており、かつ経口のトラネキサム酸の投与は除外されていますが、トラネキサム酸と血栓塞栓症との関係は以前から指摘があります。当院では処方していませんが、美容目的のトラネキサム酸、あるいはトラネキサム酸の漫然とした処方はしばしば見かけることがあり、血栓塞栓症が増加しないか懸念されます。詳しくは主治医までご相談ください。
2020/5/27、成人外傷に対するトラネキサム酸投与の合併症発生率と死亡率について調べた研究「Mortality and Complication Rates in Adult Trauma Patients Receiving Tranexamic Acid: A Single‐center Experience in the Post–CRASH‐2 Era」の結果をまとめました。