2020/11/7、後遺症を残す脳卒中予防のため急性虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作に対してアスピリンに加えてチカグレロル投与について調べた研究「Ticagrelor Added to Aspirin in Acute Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack in Prevention of Disabling Stroke: A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2020/11/7、後遺症を残す脳卒中予防のため急性虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作に対してアスピリンに加えてチカグレロル投与について調べた研究「Ticagrelor Added to Aspirin in Acute Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack in Prevention of Disabling Stroke: A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。後遺症を残る脳卒中を減らすためには、一過性脳虚血発作、軽症の虚血性脳卒中後の急性期において、予防治療を行うことが重要です。後遺症を残すの予防のために、アスピリンに加えてチカグレロルを併用することの優越性の評価、後遺症を残す脳卒中の関連因子を理解するために、「THALES」試験(The Acute Stroke or Transient Ischemic Attack Treated With Ticagrelor and Aspirin for Prevention of Stroke and Death)、2018年から2019年、28カ国、414病院、30日間追跡、無作為化臨床試験を実施しました。非心原塞栓性の非重症虚血性脳卒中またはハイリスク一過性脳虚血発作、11016例参加、30日後のmRSの記録10803例を対象としました。症状発症から24時間以内、チカグレロル(1日目180mg負荷投与、2日目から30日目まで90mg1日2回投与)、プラセボに無作為化、全例アスピリン(1日目300-325mg負荷投与、2日目から30日目まで75mgから100mg1日1回投与)しました。主要評価項目は30日以内の後遺症を残す脳卒中の再発(初回事象の増悪または新規の脳卒中)または死亡、30日後時点のmRSにて評価しました。後遺症を残す脳卒中(disabling stroke)はmRS 1超と定義しました。結果、30日後のmRS 1超例において、平均年齢68.1歳、女性1098例(42.6%)、虚血性脳卒中2670例(95.8%)でした。11016例、30日後のmRS 1超の主要評価項目はチカグレロル群5511例中221例(4.0%)、プラセボ群5478例中260例(4.7%)、有意差(hazard ratio [HR], 0.83; 95% CI, 0.69-0.99, P = .04)を認めました。30日後のmRS 0の主要評価項目はチカグレロル群5511例中70例(1.3%)、プラセボ群5478例中87例(1.6%)、有意差なし(HR, 0.79; 95% CI, 0.57-1.08; P = .14)でした。脳卒中の再発例のmRSの解析では、チカグレロル群で虚血性脳卒中の再発の後遺症の負荷は減少(odds ratio, 0.77; 95% CI, 0.65-0.91; P = .002)を認めました。後遺症と関連因子はベースラインのNIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale score)4から5、同側の30%以上の狭窄、アジア人、高齢、収縮期血圧高値でしたが、チカグレロル投与は後遺症の減少と関連を認めました。一過性脳虚血発作、軽症の虚血性脳卒中において、アスピリンに加えてチカグレロル投与することは、アスピリン単独と比べて、30日以内の後遺症を残す脳卒中、死亡の予防において優越性を認め、虚血性脳卒中の再発による後遺症の負荷を減少しました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33159526
脳梗塞急性期、一過性脳虚血発作後において、アスピリンとチカグレロルの抗血小板薬2剤併用は、脳卒中の再発、重症化、死亡を減少させたという報告です。そこまで一般的ではありませんが、急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome: ACS)と同様に、急性脳血管症候群(acute cerebrovascular syndrome: ACVS)という概念があり、急性冠症候群後には抗血小板薬2剤併用療法があるように、急性脳血管症候群後にも同様に抗血小板薬2剤併用療法が確立する時代になるのかも知れません。日経メディカルでも記事になっていました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202011/567816.html


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