2020/2/11(火)、重症右室機能障害の病因と転帰について調べた研究「Aetiology and outcomes of severe right ventricular dysfunction」の結果をまとめました。

2020/2/11(火)、重症右室機能障害の病因と転帰について調べた研究「Aetiology and outcomes of severe right ventricular dysfunction」の結果をまとめました。右室機能障害(Right ventricular dysfunction: RVD)は様々な病気において、機能状態、生存率の重要な決定因子です。重症右室機能障害の特徴、病因、生存率を調べるために、2011年から2015年まで、心エコーによって右室機能障害と診断された例を対象とした後ろ向き研究を実施しました。心臓手術前、機械的補助デバイス、先天性心疾患は除外、一次転帰は全死亡としました。64728件のエコー検査、軽度右室機能障害は21%でした。1299例(4%)の重症右室機能障害に焦点を当て、追跡しました。年齢64±16歳、男性61、重症右室機能障害の最も頻度の多い原因は左心系疾患(left-sided heart diseases)46%、肺血栓塞栓性疾患(pulmonary thromboembolic disease)18%、慢性肺疾患(chronic lung disease)17%、低酸素症、肺動脈高血圧症(pulmonary arterial hypertension) 11%でした。2±2年間の追跡の結果、701例の死亡が発生、66%は診断から1年以内でした。1年生存率は61%(95%CI 58–64%)、5年生存率は35%(95%CI 31–38%)でした。1年生存率、5年生存率は、左心系疾患がある場合、61%(95%CI 57–65%)、33%(95%CI 28–37%)でした。肺動脈高血圧症では76%(95%CI 68–82%)、50%(95% CI 40–59%)、血栓塞栓性疾患では71%(95%CI 64–76%)、49%(95% CI 41–58%)、慢性肺疾患では42%(95%CI 35–49%)、8%(95%CI 4–15%)で、差 (log-rank P<0.0001)を認めました。中程度以上の三尖弁逆流症(tricuspid regurgitation: TR)は重症右室機能障害の生存率の悪化の予測因子でした。重症右室機能障害の1年死亡率は40%近く、右室機能障害の病因に依存していました。左室系疾患は重症右室機能障害の最も多い原因でした。最も予後が悪いのは慢性肺疾患でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://academic.oup.com/eurheartj/article-abstract/41/12/1273/5733770
右室機能障害の病因と予後について調べた研究です。右室機能障害の半数が左室系疾患に続発する二次的なもので、日常臨床で診るタイプの右心不全は左心不全によるものですが、純粋な右心不全の原因は、肺血栓塞栓症、肺動脈高血圧、慢性肺疾患等、肺動脈疾患または肺実質疾患に由来するもの、いわゆる肺性心が多かったということです。今回の研究では先天性心疾患は除外されています。


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