2020/8/10、最終未発症確認から時間経過後の大血管閉塞による脳卒中に対する血管内治療について調べた研究「Endovascular Treatment After Stroke Due to Large Vessel Occlusion for Patients Presenting Very Late From Time Last Known Well」の要旨をまとめました。急性の大血管閉塞による虚血性脳卒中後の血管内治療は最終未発症確認(last known well: LKW)から16時間から24時間以内の特定の範囲内に通常限定されています。緩徐進行、側副血行路が発達している場合、16時間を超えても壊死に至らない場合があります。急性の大血管閉塞による虚血性脳卒中後、最終未発症確認から16時間経過後も救済可能な組織が存在するかどうか、大血管閉塞から遅れた血管内治療の有効性について調べるために、2012年から2018年まで、大学病院へ紹介、入院、脳卒中、一過性虚血性発作、全8032例、そのうち内頚動脈または中大脳動脈閉塞による急性虚血性脳卒中で、NIHSSスコア6点以上、最終未発症確認時刻から16時間以上経過して到着した150例を後ろ向きに特定、症例対照研究を実施しました。血管内治療の適応は、訓練された認定プロトコルに従って主治医にって判断されました。ベースラインの虚血コア、側副血行路の状態、CTまたはMRIの拡散指標を後ろ向きに評価しました。画像評価は到着から中央値93時間後、最終梗塞巣、出血性を評価しました。主要転帰は90日後のmRSスコアとしました。結果、150例、男性81例(54%)、発症年齢70.1歳、NIHSSスコア中央値12、虚血コア容量中央値11.5mL、ペナンブラ容量中央値55.9mL、ミスマッチ率中央値4.0でした。血管内治療の画像組み込み基準として、「DAWN」(DWI or CTP Assessment With Clinical Mismatch in the Triage of Wake-up and Late Presenting Strokes Undergoing Neurointervention With Trevo)の組み込み基準50例(33%)、「DEFUSE 3」(Endovascular Therapy Following Imaging Evaluation for Ischemic Stroke)の組み込み基準58例(39%)、「ESCAPE」(Endovascular Treatment for Small Core and Anterior Circulation Proximal Occlusion With Emphasis on Minimizing CT to Recanalization Times)の組み込み基準57例(38%)でした。血管内治療は24例(16%)に実施されました。傾向スコアマッチ解析にて、血管内治療は90日後のmRSスコア0点から2点のオッズ比の改善と関連(adjusted odds ratio, 11.08 [95% CI, 1.88-108.60])、90日後のmRSスコアの変化(common adjusted odds ratio, 5.17 [95% CI, 1.80-15.62])と関連していました。脳内出血は血管内治療群24例中3例(13%)、内科的治療群126例中4例(3%)、増加傾向(adjusted odds ratio, 4.06 [95% CI, 0.63-26.30])でした。最終未発症確認から24時間経過109例のサブグループでは、血管内治療は良好なmRS変化(common adjusted odds ratio, 10.54 [95% CI, 2.18-59.34])と関連していました。本研究から、前方循環の大血管閉塞で、最終未発症確認時刻から時間経過後、16時間以上、最大10日以内の場合においても、血管内治療は有益かも知れないと示唆されたと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32777014
脳梗塞の血管内治療において、救済可能(salvageable)な虚血領域が残っていると考えられる例に対しては血管内治療は有益であったという報告です。心筋梗塞の場合に救済可能な虚血領域の評価に関わらず、PCIをしないという選択肢はありえないのと同様、脳血管においてもカテーテル治療の守備範囲が広がっていくのかも知れません。
2020/8/10、最終未発症確認から時間経過後の大血管閉塞による脳卒中に対する血管内治療について調べた研究「Endovascular Treatment After Stroke Due to Large Vessel Occlusion for Patients Presenting Very Late From Time Last Known Well」の要旨をまとめました。