「循環器内科.com」に「ピロリ菌」についてまとめました。

「循環器内科.com」に「ピロリ菌」についてまとめました。
ピロリ菌→http://循環器内科.com/hp


【ピロリ菌とは】

ピロリ菌はヘリコバクターピロリ(Helicobacter Pylori)という名前の細菌で、胃炎、胃癌の原因菌です。ピロリ菌は多くは幼少時に感染し、一度感染すると除菌しない限り胃の中に住み着いて胃の粘膜の炎症を引き起こし慢性胃炎の原因になります。胃の粘膜の炎症が10年20年単位で慢性的に続くと胃癌発生の原因となります。事実、日本人の胃癌の実に90%以上がピロリ菌感染が原因であると言われており、ピロリ菌は除菌療法によって除菌が可能です。ピロリ菌の感染は幼少時の家族内感染が主な原因と言われていますので、ピロリ菌の感染源への対策として家族が全員しっかりピロリ菌を除菌すること、日本人の次世代の胃癌予防のためには社会全体でピロリ菌対策に取り組むことが大切です。

【ピロリ菌の検査】

ピロリ菌の検査は、(1)感染診断と(2)除菌判定の2種類があります。

(1)感染診断、まずピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査です。内視鏡検査、血液検査、尿検査、便検査といくつかありますが、当院では主に負担が少なく精度の高い採血検査にて感染診断を行っています。ピロリ菌に対する抗体の有無を調べる検査で、ピロリ菌に感染していれば陽性に、ピロリ菌に感染していなければ陰性という検査結果になります。ピロリ菌が陰性であればそれ以上検査を進める必要はありません。ピロリ菌が陽性である場合は除菌療法に進みます。ピロリ菌除菌成功後も抗体は残ることがあるので除菌判定は呼気検査にて行います。感染診断に関しては特に呼気検査でなくても何でも構いません。

(2)除菌判定、ピロリ菌除菌療法後、ちゃんと除菌出来たかどうかを調べる検査です。呼気判定の検査にはいくつか注意点があります。

・内服終了後、直後は正確な検査が出来ないことがあるためで、除菌療法の内服薬のセットを内服終了後、4週間以上開けて検査を行います。4週間以降であればいつでも構いません。

・食べ物が胃の中にあると検査の精度に影響を与えてしまうので、検査は空腹時、食事から4時間以上開けて行います。乳製品も避けてください。お茶やお水などは問題ありません。

・検査時間は全体で30分間程度掛かります。

保険適応のルール上、内視鏡検査にて慢性胃炎等の確定診断を受けている場合のみ保険適応になります。内視鏡検査を受けていないと自費になってしまうのですが、当院では出来るだけ多くの人に胃癌予防のためピロリ菌チェックを受けてほしいという思いから、ピロリ菌採血検査を自費で3000円(税込)にて行っています。慢性的に胃の調子が悪い、胃炎を繰り返している、家族で胃癌になった人がいる、ピロリ菌をチェックしておきたいという場合はお気軽にご相談ください。


【ピロリ菌の治療】

ピロリ菌の治療はズバリ、ピロリ菌の除菌です。ピロリ菌を除菌するのに有効な抗菌薬と胃薬のセットを7日間内服します。ピロリ菌除菌にはいくつかの除菌セットがありますが、特に理由がない限り、除菌成功率が高いものを使います。2016年夏に「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」が改訂されました。保険適応のルール上、内視鏡検査にて慢性胃炎等の確定診断を受けている場合のみ保険適応、それ以外は保険適応外ですのでご注意ください。

【一次除菌セット】

・タケキャブ系(ボノサップ:タケキャブ=ボノプラザン20mg 2T2X、アモキシシリン250mg 6C2X、クラリスロマイシン200mg 2T2Xまたは4T2X)、ピロリ菌に有効な2種類の抗菌薬、アモキシシリンとクラリスロマイシン、胃薬のタケキャブの合計3種類を7日間内服します。「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版」によると、除菌成功率は92.6%と報告されています。処方箋通りに内服した場合の除菌成功率であり、飲み忘れなど、処方箋通りに内服しないと除菌成功率は下がってしまいますのでご注意ください。

・一次除菌セットには他に、タケプロン系(ランサップ:タケプロン=ランソプラゾール30mg 2T2X、他2剤共通)、オメプラゾン系(オメプラゾン=オメプラゾール20mg 2T、他2剤共通)、パリエット系(ラベキュア:パリエット=ラベプラゾール20mg 2T2X、他2剤共通)、ネキシウム系(ネキシウム=エソメプラゾール20mg 2C、他2剤共通)があります。「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版」によるとそれぞれの除菌成功率はタケプロン系83.7-91.1%、オメプラゾン系78.8%、パリエット系85.7-89.0%、ネキシウム系67.5-69.4%と報告されています。

【二次除菌、三次除菌セット】

・一次除菌除菌不成功であった場合に二次除菌を行います。一次除菌失敗の原因の一つにクラリスロマイシンへの耐性が指摘されていますので、二次除菌ではクラリスロマイシンをフラジール(メトロニダゾール)という抗真菌薬に変えます。二次除菌にもいくつかの除菌セットがありますが、それぞれの除菌成功率は、タケキャブ系(ボノピオン:タケキャブ=ボノプラザン20mg 2T2X、アモキシシリン250mg 6C2X、メトロニダゾール250mg 2T2X)98.0%、タケプロン系84.8-93.4%、オメプラゾン系92.4-92.9%、パリエット系91.6-92.9%、ネキシウム系83.9%と報告されています。二次除菌セットに含まれるフラジールという薬はお酒と併用NGで、もし間違って一口でもお酒を飲むと吐気が止まらなくなりますので二次除菌療法中は本当にお酒は飲まないでください。

・一次除菌、二次除菌で除菌不成功だった場合に、さらに、抗菌薬を変えたり増量したり、胃酸を抑える薬を増量したり、投与期間を延ばしたりなど様々な工夫をして除菌成功率を高めようとします。極論ですが、タケキャブを2倍量、アモキシシリンを2倍量、さらにメトロニダゾールを併用、投与期間を2倍の14日間にすると、ほぼ確実に除菌可能という話を聞いたことがありますが、あまりに適応外の大量の薬剤の処方になりますのでオススメはしていません。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。

【お茶の水循環器内科】

お茶の水循環器内科は5年目を迎えました。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町にてスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関になりました。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、心血管疾患の危険因子をコントロールすることで十分に予防が可能です。具体的には、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続を行うことが重要で、そのために当院は夜間や土日も診療をオープンにしています。心筋梗塞と脳卒中を防ぐこと、これが我々の使命です。お茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐

【具体的な診療範囲】

お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、慢性心不全などの循環器疾患です。循環器内科の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、他)
・心筋梗塞後、抗血小板療法、ステント留置後の管理、バイパス術後の管理・慢性心不全の管理
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・弁置換術後の管理、弁形成術後の管理、抗凝固療法・心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、高血圧性心肥大、他)
・大動脈瘤、大動脈解離後の管理
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防、アブレーション治療の適応の評価、アブレーション治療後の管理
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・2型糖尿病、1型糖尿病、糖尿病合併症の管理、インスリン管理
・慢性腎臓病、腎硬化症の管理、糖尿病性腎症の管理
・その他、健診後の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も心血管疾患の危険因子として循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、一度なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。お気軽に主治医までご相談ください。


PAGETOP